2017/08/12

高石涼香さん|東京大学

私は中距離種目を注目して見続けているわけですが、この2年である選手が気になり始めています。
東京大学の高石さんです。
初めて見たのは昨年のホクレンディスタンス北見大会。
大森さんが先頭でゴールしたレースで高石さんは2分15秒台で走っていました。
「東大にこんな中距離選手がいるのか」それが最初の印象です。

今年4月の日体大記録会での800mでは、山田さん沖田さんを相手に序盤から積極的な走りで2分12秒52でゴール。
後半失速するものの、次につながる走り方をしているなという印象がとても強かった。
そして7月のトワイライトゲームスでは2分11秒23を出します。
この記録は東京大学の大学記録。
どんどん記録を伸ばしているのですが陸上を始めたのは大学に入ってからだそうです。
それもそのはずで、高石さんは東京都文京区出身、桜蔭高校の卒業生です。
桜蔭は「超」がつくほどの進学校。
勉強する環境は整っていても、本格的なスポーツ環境は皆無と言ってよい学校です。

いずれにしてもです。
運動経験がほとんどない高石さんがこれほどまで記録を伸ばしていることは素敵なことだと思います。
女子選手が800mで2分15秒を切ろうと思えば、それなりに苦しい練習をしなければなりません。
どこの大学であったとしても決して楽ではないはずです。
センスの良し悪しは確かにあるかもしれませんが、高石さんの活躍は、大学から陸上を始めてもインカレで勝負することは可能だと思わせてくれます。

今年の高石さんの走り方を見ると、昨年と比べて随分伸びやかなスプリントが出来るようになっています。
秋から春にかけての過ごし方次第では、2分9秒前後で走ることも夢ではないと思われます。

その高石さん、レース後の反省点や課題などをブログに綴っているのですがその記事が興味深い。
実は高石さんの走りに注目し始めたのも偶然ブログの記事を見てからでした。
高石さんは、自分自身の課題を的確に見つけています。
最近の記事、7/23 トワイライト・ゲームス800m 高石には反省点として
今できる最善のレースではあったけど,2’10”台に近づけていくためには、
・スタート…またスタートでミスした。これはどうしたら改善できるんだろうか…
・200-400-600の各地点でそれぞれ0”3ずつくらい縮める…どうしたらいいんだろうか…
・400-600でペースをキープすること…ビデオ見ると明らかに400-600で落ちている。
と挙げています。
陸上競技(スポーツ科学)は自然科学の一分野。
解答は必ずあるはずです。
その答えを行動目標として実践を重ねた時、高石さんは確実に速くなる…そう思います。

2017/08/11

カンパネッラと宮沢賢治

宮沢賢治の童話「銀河鉄道の夜」に、カムパネルラという少年が登場します。
童話の主人公、ジョバンニが尊敬する少年で、彼は溺れた友人を助けるために死んでしまいます。
ジョバンニは、そのカムパネルラと銀河鉄道に乗車し、幻想的な宇宙を旅します。
この童話を小学校で習った方も多いことでしょう。
私も好きな作品のひとつです。
特に魅力的な登場人物がカムパネルラです。
彼の人間性や思想は何となく想像はできるものの、言葉にするのは非常に難しい。
学校の先生も、生徒に説明するのは大変なことだろうと思います。
その参考になるというわけではないのですが、今改めて「銀河鉄道の夜」を読み返すと、想い起されるのはルネッサンス期の哲学者、カンパネッラです。

カンパネッラの名を私が知ったのは大学を卒業して出版社に勤務するようになったころです。
その名から真っ先に思い浮かんだのが「銀河鉄道の夜」に登場するカムパネルラです。
これほど変わった名前が似ているのですから、理由があるはずだと思わずにおれませんでした。
「銀河鉄道の夜」には容易に説明できない不思議な感覚に陥る場面が多々あります。
それが少しでもはっきりしてくるのかもしれない。
私はカンパネッラの著作を読み漁りました。

トマーゾ・カンパネッラはボルタやブルーノなどと共に、ナポリの精神伝統に連なっている思想家です。
若い頃にはガリレイと交友があり、近世ユートピア思想の先駆的な「太陽の都」(1623年)の著者として知られています。
カンパネッラは、地球、星、宇宙のすべてが感覚を有しているとみなし、その中で生きる人間がいかに卑小であるかを説き、慢心を戒めます。
このことは彼の残した多くの詩篇に随所に表れています。
また、「自惚れに対する素晴らしき発見」という詩の中では、
われら以外のものはすべて野蛮で無知にして、神はわれらのみを眺め給うと信じさせ、かつまた、神は僧職にあるもののみを救うと信じせしめり。かくして各人は自己のみを愛するに至れり
とあり、ここからは当時僧職にあるものたちが、「魂の救済」において特権化されていたことに、カンパネッラが厳しい批判の態度をとっていたことがうかがえます。
このカンパネッラの世界観と人間像は「世界とその部分について」という詩によく出ています。
世界は大きく、しかも完全なる生き物、神の御姿にして、神を讃え、神に似たるもの。われらは不完全な虫にして、いやしき生き物、われらは世界の体内に巣食いて生きるもの
これと似た内容が「太陽の都」にも出てきます。
世界は巨大な生きもので、その体内にわれわれ人間は、われわれの体内にやどる寄生虫のように生きています。だからこそわれわれは、世界や星や大地の摂理に従うのではなく、神の摂理にのみ従うのです。なぜなら、世界や星とのかかわりにおいては、われわれは偶発的な存在ですが、世界や星を手段とする神とのかかわりにおいては、われわれは予見され予知された存在だからです。
「銀河鉄道の夜」を読まれた方なら、宮沢賢治とカンパネッラとが重なって見えてきたのではないでしょうか。
初めてカンパネッラの著作を読み終えて、改めて「銀河鉄道の夜」読み返したとき、私には「銀河鉄道」に乗車する人物、カムパネルラはもちろん、女の子、博士、大学士などの全員がカンパネッラであるように思えてなりませんでした。
また惑星と宇宙の描き方など、宮沢賢治はかなりカンパネッラの影響を受けていたと思われます。
カンパネッラの宇宙感覚、生命感覚を片隅に置いて「銀河鉄道の夜」を読み返してみるのも面白いかもしれません。

2017/08/02

中距離がすごい|2017山形インターハイ

今年のインターハイは男女とも中距離がとんでもないことになっています。
中でも驚いたのは女子800m。 優勝した塩見綾乃選手(京都文教高)、2位に入った川田朱夏選手(東大阪大敬愛高)ともに高校新記録。
タイムは2分2秒57と2分2秒74。
日本歴代でも5位と7位です。

2秒台だけでも驚きなのですが、同一レースで2秒台が2人というのは日本陸上界初。
日本選手権では2位と3位に入った2人です。
優勝した北村さんと4位の大森さんの間に入ったことが大きな自信につながったのかもしれません。
このまま競い合うように、高校卒業後も800mを専門に続けて欲しいと願わずにはおれません。

そして男子1500m。
この種目は学法石川が3連覇です。
3連覇も素晴らしいのですが優勝した半澤君のタイムは3分44秒57。
インターハイ大会記録(日本人最高)を更新しました。
それまでの記録は29年前、濱矢さんの3分45秒46。
インターハイの決勝では順位を重視する傾向があるので濱矢さんの記録が抜かれる日はそうそう来ないだろうと思っていました。
ですが最初からハイペースとなれば別。
結果的に8位の小野君で3分50秒10というとんでもないレースになりました。
さらに驚いたのは5位の林田洋翔君。
3分46秒17という素晴らしいタイムを出しましたがまだ1年生です。
そして男子800mでは2位に入ったクレイアーロン竜波君が高校1年生の記録を更新しました。
これは28年ぶりです。
それまでの高校1年生の最高記録は私と同期、小野友誠が出した1分51秒06です。
小野は高校3年生の時、静岡インターハイ決勝の舞台で、ラスト100mくらいで集団の後ろにいるにもかかわらず右拳を高く突き上げてスタンドの声援に応え、そのままごぼう抜きで優勝。
法政大学在学中の94年には日本記録を出した怪物でした。
あの小野友誠の記録が破られる…これもまた驚きでした。

林田君とクレイアーロン君、男子はとんでもない1年生が2人も出てきました。
両名とも駅伝の強豪校ではないというのも興味深いところです。