2017/06/25

800m決勝(男女)|日本選手権

800mの決勝は男女とも考えさせられることが盛りだくさんでした。
男子の決勝は川元君が1分47秒で優勝。
世界陸上の標準記録は突破できませんでしたが日本選手権5連覇です。
勝つことが当然すぎて、注目されるのは五輪や世界陸上に出られるかどうかばかりなので目立たないけれど、日本選手権で5連覇はとんでもない偉業です。

それでも厳しいことを言わせてもらうと、400~600までのラップが落ちすぎているように思います。
400mを51秒台で通過。
500mは65秒なのでこの100mは13秒5くらい。
そして600mは79秒で通過。約14秒かかっています。
ここをどうにかしないといけないと思うのですが、横田さんが引退した今の日本国内ではこのレベルで競い合うことが難しい。
以前のように600までペースメーカーを使ったとしてもやっぱり最後は自分で上げないといけない。
「この人に勝てたら世界に行ける」
そう思われる存在になれるかどうか。
前人未踏、未知の領域ですが、これからの中距離界がどうなるかは川元君がどこまで走れるかにかかっています。

ところで3位には日大OBで今年からTSP太陽に所属している三武君が入りました。
柔らかいスプリントは社会人になっても健在で、予選では1分47秒4の自己ベスト。
46秒台が見えてきているように思えます。

女子は北村さんが優勝。
2分4秒62の好タイムです。
記録会で2秒台を出して、関東インカレで優勝し今回の日本選手権でも優勝。
日本インカレも優勝候補筆頭なので3冠達成の可能性は十分です。
この選手をユニバの代表に選ばなかったのだから一体全体何を考えているのやら…。

で、3冠達成を大学4年の時に成し遂げた大森郁香さんは今回4位。
これまた厳しいことを言わせていただくと、出だしがよろしくなかった。
怖いものなしの高校生が飛び出して最初の200を28秒くらいで通過。
大森さん、山田さんの社会人2名は集団の最後尾につける形となってしまいました。
こうなると位置取りを回復させたいから200から400までの間で少しスプリントを使ってしまいます。
追いついたころには前にいた選手は鐘の音を聞いて気持ちを変えることができ、バックストレートでスパートをしかけます。
そこについていけなくなってしまう。
それでも粘って4位に入るのは大森さんだからこそでしょう。
いずれにせよ、最初の100mを少し速いくらいで飛び出して、オープンになった瞬間に位置取りを調整して主導権を握ることが重要だろうと思います。

川元君と同じように、女子中距離界には大森さんの活躍が不可欠です。
毎年勢いのある高校生が出てきますが、その面子の入れ替わりが激しい。
それだけ続けることが困難、或いは続ける気にならない種目であると言えます。
「社会人になっても続けていたら伸びるかもしれない」
20代半ばでも記録を伸ばすことで、若い選手がそう思うようになるかも知れない。
佐藤さんが日本記録を出したのは27歳の時でした。
大森さんにもその可能性は十分ある。

川元君、大森さんともアジア選手権の日本代表に選ばれています。
2人とも2大会連続での出場です。
前回は川元君がアジア2位、大森さんが7位。
川元君は優勝を狙っているでしょうし、大森さんも前回以上の順位を視野に入れているでしょう。
今回のアジア選手権は優勝すれば世界陸上の代表の座がついてくる大会です。
2人の走りが今から楽しみです。

日本選手権 棒高跳び

やっぱり棒高跳びを見るのは楽しい。
日大関係者が活躍しているとなると尚更です。

男子は日大の江島雅紀君、5m50で日本選手権3位に入りました。
そして日大OBの澤野選手。
江島君のコーチを務めながら競技を継続しています。
こちらも5m50をクリアして2位。
まだまだ存在感を見せてくれました。
5m50をクリアした江島選手と澤野選手
子弟で日本選手権に出るというのもなかなか見ない光景です。
しかも2位と3位に入ってしまうのですから。

江島君は7月のアジア選手権の日本代表に選ばれています。
ここで優勝すると世界陸上ロンドン大会に出られますから要注目です。

女子はベテラン勢の活躍が目立ちました。
その中で高校生の田中怜奈さんが4mをクリアし6位入賞。
4mはU-18日本ユースタイ記録です。
この前3m90をクリアしたばかりの高校2年生。
伸び盛りのようです。

2017/06/24

大森郁香さん|日本選手権女子800m予選

日本選手権2日目、女子800m予選を大森郁香さんが全体1位で通過しました。
予選は3組あって、2着+2が決勝に進出。
大森さんが走った3組目は、昨年2位の山田はなさんと最近2分2秒台を出したばかりの北村夢さんがいたので、予想通り予選から本気モードのレース展開になりました。
1周目を62秒で通過しての2分5秒3でゴール。
ゴール後、珍しく予選からガッツポーズが出ました。

山田さんはタイムで拾われて決勝進出。
若い高校生から社会人まで、いいメンバーが揃ったように思います。
東大阪大敬愛高からは2名が決勝進出。
日本選手権で同一種目の決勝に同じ高校から2名というのはなかなかすごいですね…。

決勝は明日の16時20分からです。
ライブ配信もされると思います。

2017/06/05

ミシェル・フーコー|言葉と物

私がミシェル・フーコーの名前を知ったのは、寺山修司のエッセイや対談集からでした。
フーコーは現代のニーチェやカントと言われる哲学者で、1984年にエイズで亡くなっています。

初期のフーコーは「狂気の歴史」や「臨床医学の誕生」などの著書で、医学の認識論的基盤に対して問題提起を行いました。
特に「狂気の歴史」は西洋の理性的人間像を根底から覆したと言えるほどの、フーコーの代表作でもあります。
このフーコーの著書の中で、私が最も影響を受けた1冊が、1966年に出版された「言葉と物」です。

「言葉と物」は主体哲学への徹底的な批判を行った書であり、これによりフーコーは構造主義の代表的思想家として注目されるようになりました。
どれだけ注目されたかというと、「言葉と物」は大冊でありながら、パリでは「バゲットのように売れに売れた」本だったそうです。
とても難解で重たい本なので俄かには信じがたい話です。
しかし売れたのは事実です。
本に限らず、あらゆる商品が売れる重要な条件は、その商品に感動を引き起こす要素が含まれていること。
「言葉と物」の引き起こす感動、それは間違いなく「不安」です。
中でも読者を不安にさせるのは人間の終焉についての言説でしょう。
この本の序文でフーコーは
人間とは最近の発明にかかわるものであり、二世紀と経っていない一形象、われわれの知の単なる折り目にすぎない
としてさらに、
だから、知がさらに新しい形象を見出しさえすれば、早晩消え去るものだ
と続け最終章の末尾に、
そのときこそ賭けてもいい、人間は波打ち際の砂の表情のように消滅するであろう
と記します。
この二つの箇所とも、歴史上の人間主義の終焉を指しているのだと考えられるのです。
それを「人間の終焉」や「人間の消滅」としているのは、効果を狙った修辞学的な表現であろうと私は考えていました。
しかし年々人間の消滅は修辞学的な表現では済まされないような事態になりつつあります。
西欧における人間概念の中心をなす「自我」は単なる幻にすぎないのではないかとする問いが東洋思想から起きているし、自我と不可分な「人権」の概念は非西欧社会にどれだけ妥当するのかということも問題になっています。
特にこの問題は、欧米諸国や日本が中東で行っている軍事政策に大きく関わりあいがあるように思われます。
また急速に発達するIT化が人間の能力を超えた次元の作業を行いつつあり、医療の世界では人間のクローンも技術的に可能な状態に達しています。
フーコー自身は予言したつもりはないのでしょうが、
「知が、さらに新しい形象を見出しさえすれば、早晩消え去るものだ」
という言葉は、あまりに的を得ているように思えます。
恐らく、人間の、人間に対する概念は、日常生活の中で急速に、しかも無意識の内に変化し続けてしまうのでしょう。
そしてその度、それまでの人間は概念上、消滅する。

もっとも、こうした技術の発達がなくとも、温暖化などにより、21世紀の最後に人間が地球上に存在できているかという深刻な問題も発生しています。
フーコーは晩年「主体の回復」を説いており、そこから彼の人間や主体の消滅論は、西欧的自我に対する厳しい自己批判であったことが伺えます。

私は、今こそ日本の哲学はフーコーの「言葉と物」を見直すべきだと考えています。
東洋に位置する西欧的な社会での自我は、常に宙ぶらりんか、存在していないかのどちらかであると思うからです。

ところで、陸上競技における記録もまた「単なる折り目」にすぎないのかも知れません。
以前、昔の選手について記事にしましたが、条件が同じなら昔の選手は今の選手より好記録を出していたかもしれません。
新しい形象を見出しさえすれば消え去るもの。
この形象とは、スパイクやユニフォーム、競技場のトラックの製造技術であるとも考えられます。
早晩消え去る…これは記録だけではなく、他でもない競技者そのものに該当するのかも知れません。

2017/06/03

北村夢さん 2分2秒52|日体大記録会

日体大の北村さん、2分2秒52で日本歴代4位。
ユニバーシアードの参加標準記録をクリアしたそうです。
映像見て驚いたのがペースメーカーが400で抜けたこと。
ラスト400を一人旅でこのタイムはなかなか驚異的です。
川元君や大森郁香さんにしてもそうですが、短・中距離系の種目でシニア期に入って伸びた実力は本物だろうと思います。
特に女子の場合、18歳以下で出したベスト記録を、高校卒業後に体系や骨格が変わり更新出来ない選手が多くいます。

誰かが好記録を出すと、他の選手も目指しやすくなります。
何しろ北村さんが走った前の組には大森さんや山田さんが走っています。
この記録と走りを目の当たりにしたようです。
画像直リンク先https://goo.gl/LA5ymH
やまだはなさんのツイートより
大森さんが3秒台を出してから3年、北村さんの2秒台は日本女子中距離界の扉を破るきっかけになるかも知れません。