2017/05/27

河津聖恵さんの「夏の花」


梅雨入りした日、10㎞走って帰宅するとかつての職場から1冊の詩集が届いていました。
河津聖恵さんの「夏の花」。
福島、広島、そして沖縄…これほどまでに向き合い続けている詩人が今他にいるだろうか。

原発の根元に咲いた花を河津さんは詩います。
一輪の花がいまひらきはじめる
なおも咲くのか
なぜ咲くか
無数の黒い穴は問いもだえる
死ぬことも生きることも滅んだのに
宇宙の一点をいま花の気配が叛乱する
「月下美人(一)」より
そして沖縄で書かれた作品にたどり着くころには、大変な詩集を手にしたものだと恐縮しながら読むことになります。
「大変な」とは、沖縄という地で平和と対峙すること。
杖で足元を確認するように、平和とは何かを検証すること。
創作においてこれほど苦しく辛い作業はありません。
詩は思考の向こう側にあります。
沖縄の現実を直視し平和とは何かを検証することは、思考の段階で既に困難を極めるのです。
他でもない私自身がとてつもなく苦しんだ、そして今も格闘している作業です。
河津さんは4編の詩を、思考の向こう側に辿り着かせています。
花明かりはほろびない どんな闇にも 花は花の魂を奪わせないと
河津さんが来沖された時、少しだけ沖縄をご案内したことがあります。
地中の骨について語り、地中の骨の上を歩きました。
あの時の感覚が、作品を読むと蘇ってきます。

乱開発が繰り返される沖縄で、私はまだ、かろうじて走り続けています。
花の輝きと地中の骨の声は、まだ私に届いている。
「夏の花」が、大切なことを確認させてくれました。
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